研究内容RESEARCHES

広島大学大学院先進理工系科学研究科 スマートイノベーションプログラム
スマートロボティクス研究室 教授
石井 抱 Idaku ISHII
>> 研究テーマ
1秒間に1000コマ以上の実時間画像処理を実現する高速ビジョン技術を始めとして、人間の感覚能力を遥かに上回る実時間センシング技術の確立を目指した情報システム/デバイスの研究開発を行うとともに、高速化・集積化を念頭においたアルゴリズムの研究、さらには人間には感じとることが難しい振動ダイナミクス等の情報を積極的利用した新たなセンシング技術の実現を目指します。

高速三次元形状検査のための自己投影型光切断法

光切断法は一般的な三次元形状計測法として知られているが、撮影された画像の中の多くの領域は処理に不必要な部分のため、高速な三次元形状計測を行う場合には必ずしも効率的とはいえない。 そこで本研究では、投影パターンに対象形状情報を内包させることにより、処理に必要な画素数を削減可能とした自己投影型光切断法を提案し、高速ビジョンシステム上に実装することにより、10000fpsでの実時間三次元形状計測を実現した。

提案手法では、直線スリット光の代わりに、検査すべき対象の形状に合わせた曲線パターン光(以降では自己投影パターン光と呼ぶ)を投影する。 対象に投影された自己投影パターン光は、カメラから見ると一直線になるように生成され、既知の三次元形状テンプレートとして機能する。 その結果、自己投影パターン光を用いた光切断法では、テンプレート既知形状からの相対的な三次元形状が計測可能となり、特に凹凸が激しい形状の場合においても画像の狭い領域に投影パターン光を観測可能とする。


自己投影型光切断法では、(1) 自己投影パターン光のオフライン生成、(2) 三次元差分形状のオンライン計測 という2つの処理があり、これらの処理を高速ビジョンプラットフォームIDP Express上に実装した。 自己投影パターン光は、リファレンス対象を配置した上で、プロジェクタから直線スリット光を左から右に走査して投影して計測された画像列を基にオフライン生成される。 リファレンス対象との三次元差分形状は、10000fpsでキャプチャされた96×512画像に対して、従来の光切断法と同様に列毎にスリット位置を計算することで 求められる。 本研究では、列毎の重心計算回路のFPGA上への実装によりこれらの処理が高速化されている。

階段状形状を持つ対象に対して、三次元形状計測実験を行った。 なお対象の表面には、1mm前後の深さで字が刻まれている。 これらの結果から、自己投影型光切断法を用いて10000fpsでの実時間三次元形状計測が凹凸が激しい形状に対しても実現され、全体的な凹凸形状と微細な表面形状の両方が同時に計測できることを確認した。




自己投影パターン
光生成
WMV(0.7M)
三次元形状計測
at 10000 fps
WMV(0.2M)